雪玉 SNOWBALL/酒蔵の想いが宿るラベル開発ストーリー
酒蔵の想いが宿るラベル開発ストーリー。
クリエイティブと製造技術への挑戦。
第33回シール・ラベルコンテストへの出品協力のお願いから始まった共同プロジェクト。
当プロジェクトでは、商品名の提案やラベルデザインの制作に至るまでのクリエイティブな分野から、印刷・製造の提案、そしてラベル印刷まで、幅広い領域にわたり関与させていただきました。限られた時間の中で、クライアント企業様と共同で成し遂げた成果とそのプロセスをお届けします。
新潟県魚沼市に日本酒蔵を構える玉川酒造様では、商品ラベルを単なる外見だけでなく、酒蔵の想いや伝えたいメッセージを代弁する重要なツールと位置づけています。商品ラベルはお客様とのコミュニケーションを深める手助けとなると考えられているためです。
お酒作りの想いを詰めこんだ雪玉 “SNOWBALL” ラベルは、第33回シール・ラベルコンテストにおいて【全日本シール印刷協同組合連合会会長賞】を受賞。実りのある成果を共創するプロジェクトとなりました。
雪玉 “SNOWBALL”
ラベルが
誕生するまで
雪玉 “SNOWBALL” は、日本有数の豪雪地の雪室で雪中貯蔵した15年熟成から3年熟成までの中から選んだ長期熟成酒をブレンドしたプレミアムな大吟醸酒です。そのネーミングやラベルデザイン選定にも玉川酒造様独自のストーリーが込められています。
大吟醸酒のコンセプト
(&ラベル制作に関するご要望)
- 外国人観光客がターゲット、限定販売品
- 雪中貯蔵の古い年代の「古酒」と新しい年代の日本酒をブレンドしたお酒
- 雪中貯蔵と玉風味を合わせ、造語でいいので品名にしたい
- 雪中貯蔵を英語で表現したい
- 雪を表現したい&「和」のテイストも残したい
ラベル制作プロセス
上記コンセプトを踏襲した商品名案とラベルデザイン、原紙と加工の組合せを複数提案。商品名は【雪玉 “SNOWBALL”】に決まり、デザインをブラッシュアップ。レースデザインやエンボスによるテクスチャーの検討を経て独自のデザインが完成。
銀箔を細部にちりばめ、PREMIUM DAIGINJOは金箔を用い、2種類の箔を巧みに使い分けプレミアム感を表現しています。玉川酒造様のこだわりと品質への追求心が際立っています。
原紙:アート
色数:5C(CMYK、ニス)
加工:中抜き、ライトエンボス、箔押し(金・銀)
玉川酒造/雪玉 “SNOWBALL”ラベル
制作プロセスの詳細はこちらから
→ インタビュー/玉川酒造株式会社 風間様
機械設備
MAX-300
1〜6色の印刷と型抜きが可能な凸版間欠輪転印刷機です。印刷には樹脂版を使用し、小ロットから大ロットまで幅広く対応しています。また、のりごろしや裏面印刷も可能です。LEDUVを搭載しています。
PH-3525
平圧打抜機。主に箔押し、ラミネート加工、型抜き工程に使用しています。
VB53
万全の振動・熱対策が施された精密金型対応マシニングセンタです。社内でフレキシブル刃型を作成する事が出来ますので納期に関しても迅速に対応致します。
シール・ラベル
コンテストの結果
シール・ラベルコンテストは、全日本シール印刷協同組合連合会が主催する「シール・ラベル印刷の技術力を競うコンテスト」です。
当コンテストでは、①印刷・抜きの見当精度、②画線のシャープさ、③網点とグラデーションの具合、④インキのノリとムラの具合をはじめ、自由課題では、用途の有無が審査対象となります。アイデア開発部門ではさらに、新規性、独創性、機能性、用途及び実用性が総合的に審査されました。これらの審査基準に基づき私たちのラベルを評価していただきました。
Interview
インタビュー
/玉川酒造株式会社 風間様
完成した雪玉 “SNOWBALL” を前に
風間社長からお酒造りへの想いや
日本酒を取り巻く環境、商品ラベルに期待すること、
そしてラベルデザイン制作における共同プロジェクトに
焦点を当ててお話を伺いました。
対談を通じて共創のもたらしたものに迫ります。
玉川酒造株式会社
創業350年以上の歴史を誇り、19代にわたり玉風味を提供し続けている老舗の酒蔵です。山々に囲まれ、冬は3メートルもの雪が降り積もる新潟県魚沼市。魚沼の自然豊かな風土を活かし、ゆっくりと醸されたお酒は丁寧に搾られた後に瓶詰めされ、出荷の刻を待ちます。
玉
玉川酒造 風間様
FJ
フォーワテック・ジャパン
人の心を豊かにする、
人生を豊かにする商品作りを
/玉川酒造株式会社
FJ
玉川酒造さんは、創業350年にわたる非常に歴史がある酒蔵です。代表銘柄の「玉風味」も19代目に渡り受け継がれています。この機会に酒蔵の歴史やお酒作りへの想いやコンセプトについて改めてお聞かせいただけますでしょうか?
玉
当酒蔵は、小さな酒蔵の部類に入ると思うんですよ。1年間で作ってる数量もそんなに大きい量ではなく、新潟県内には約90ほどの酒蔵があると言われていますが、下から数えた方が早いくらい小さな酒蔵であります。
なのでまず1つ、1番大事なことからいきましょうかね。
コロナ禍で再認識したんですけども、お酒は人にしか味わうことができないじゃないですか。例えば肉や野菜は動物が食べたりとかもあると思うんですけど、お酒は人にしか味わうことができないということは、人の心を豊かにする、人生を豊かにする商品を本当に追求していかなければいけないんだなというところです。
弊社としては、もちろん大吟醸とか、昔ながらの玉風味など地元の人に飲まれるお酒もありますし、すごく甘いお酒であったり、すごく辛いお酒であったり、ちょっと変わったお酒も色々あるんですけども、その心はやっぱり、 人の心を豊かにする、人生を豊かにする商品作りっていうところから、それらの商品が成り立ってます。
玉川酒造株式会社
代表取締役 風間様
商品ラベルに期待すること
FJ
作り手側から見た商品ラベルは、どのような存在でしょうか。
玉
中身はもちろん想いを持って作るってのはメーカーとしては当然なんですけども、見た目っていう部分は、自分たち、少なくとも弊社ではなかなかうまく表現することができなくて。それをデザインしてもらうっていうのがとても大事で。
後ほどコンセプトの話が出てくると思うんですが、表示できることって少ないじゃないですか?ラベルって。
でもそれが蔵の想いだったり、代弁者というか、ラベルがそこで伝えてくれないとお客様に伝わらないのかなって思います。
共同プロジェクトについて
FJ
では、この度のプロジェクトを振り返りまして。
2月の上旬に初回のデザイン提案を出させていただいた記録が残っています。
玉
この段階ではまだ商品名が決まってなくて、話した後に「ゆきたま」って名前で行こうっていうのを伝えたんだ。
日々色々考えているんですよ。こういう商品作りたいなっていうのは常に考えていて。
FJ
そうでしたね。品名が決まってこの後に中央の中抜きのモチーフの検討に移っていきました。
この抜きの部分に関しては、弊社の技術的なルールがあって、微調整をさせていただきました。
玉
この技術を最大限にアピールしたくて、やっぱり面積が大きい方がいいかなと思ったんですよね。また決めていくって大事なことですよね。すごく苦労するんだけど、決めるって難しいことですよね。
それにやっぱり手に取った時に多い。何しようっていうのは。まず手に取ってもらえるのが1番だと思うんですけど、触った時に、あ!って思わせたいって。
FJ
触った時のこのシール1枚分の厚み、この感触は絶対触らないとわからなくて、こだわっているところはありますね。
ただ普通に透明の原紙で透けてるだけっていうものではなくて。五感に訴えるではないですけど。
玉
細部までこだわる。ここにこだわる人が酒にこだわらないわけがないと。酒にこだわる人が米にこだわらないわけがない、という表現に繋がっていくと思うんですよね。こんなとこまでこだわったんだっていう、やっぱりすごく大事だなと思います。
最後に
FJ
最終的にカラー4色、ニス、ライトエンボス、金箔、銀箔、レース仕様となりました。
ラベル自体に関する評価はいかがでしょうか?
玉
本当によかったですよ。全部表現されていますね。
入れたいことがいっぱいあるんですよ。例えば歴史とか入れたいことがいっぱいあるんだけど、一応全部入ってるんですよね、ここに。
あとラベルがやっぱり安いものじゃないじゃないですか。で、とても繊細なものなので大事に貼らなきゃいけない、お酒も大事に扱わなきゃいけないっていうことに繋がって、こういう1個1個がうちの会社の中でも意識の変化に変わるんですよね。大事にしようっていう。いや、こっちの商品も大事にしたんだから、あっちの商品も大事にしようっていう風に繋がっていくというか。
こういう商品がまた自社で生み出すことができて、1個1個見直していく、良くしていこうよっていうきっかけの1つになったと思うんです。
FJ
私たちも今回のプロジェクトのように、クライアント企業様と共同でものを作り上げていくこのプロセスがやはり大切だと実感しています。最終的に納得ができる良いものができ、こちらも大変嬉しく思っています。
本当にありがとうございました。
クリエイティブと
製造技術で
期待に応える
雪に対する憧れを感じる外国人をターゲットに、雪を強く表現した日本酒を作るというコンセプトのもと誕生した大吟醸酒 雪玉 “SNOWBALL” は、雪中貯蔵の古い年代の古酒と新しい年代の日本酒をブレンドした高い付加価値を持つ商品として位置づけられました。そしてその独自の特徴を際立たせるためのラベルデザインが求められました。
異なる業種であっても、真摯にモノづくりに向き合う2社。製品に対する熱量や苦労が製品に魅力を与え、ラベルの触感や細部にまでこだわることは、製品に対する姿勢や価値への深いこだわりを示すものとなります。
最終的な受賞はもちろんですが、クライアント企業様に真摯に向き合い、クリエイティブと製造技術で期待に応える姿勢を評価いただきました。ゴールを共有し、試行錯誤を繰り返すこのプロセス全体が、弊社にとって非常にメリットのあるものであり、協業によって得られた価値は大きいと実感しています。
このプロジェクトでは、クライアント企業様の要望に対し、印刷・デザインのクリエイティブな面から印刷・製造の技術的な面までを網羅し、伴走させていただきました。これらの過程においても、ご理解ご協力をいただきました企業様のお力添えがあっての事と改めて感謝申し上げます。
今後も印刷技術の向上に努め、皆様からの信頼に応えられる製品を提供し、社会に貢献してまいります。
印刷オペレーターコメント
凸版印刷機/MAX-300
水色の瓶を想定した、青空の中にある雪の美しさを表現したようなラベルデザインだなと思いました。
印刷では、見当精度と印圧調整を安定させることに苦労し、特にカラー掛け合わせ毛抜き文字部分では困難な明朝体に挑戦し、見当精度に対して細心の注意を払いました。
原紙の風合いを生かしながら、雪の深みと全体の清涼感を上手く表現できたのではないでしょうか。