雪玉 SNOWBALL/玉川酒造インタビュー
Interview
インタビュー
/玉川酒造株式会社 風間様
完成した雪玉 “SNOWBALL” を前に
風間社長からお酒造りへの想いや
日本酒を取り巻く環境、商品ラベルに期待すること、
そしてラベルデザイン制作における共同プロジェクトに
焦点を当ててお話を伺いました。
対談を通じて共創のもたらしたものに迫ります。
玉川酒造株式会社
玉川酒造は、350年以上の歴史を誇り、19代にわたり玉風味を提供し続けている老舗の酒蔵です。山々に囲まれ、冬は3メートルもの雪が降り積もる魚沼市。魚沼の自然豊かな風土を活かし、ゆっくりと醸されたお酒は丁寧に搾られた後に瓶詰めされ、出荷の刻を待ちます。
玉
玉川酒造 風間様
FJ
フォーワテック・ジャパン
人の心を豊かにする、
人生を豊かにする商品作りを
/玉川酒造株式会社
FJ
玉川酒造さんは、創業350年にわたる非常に歴史がある酒蔵です。代表銘柄の「玉風味」も19代目に渡り受け継がれています。この機会に酒蔵の歴史やお酒作りへの想いやコンセプトについて改めてお聞かせいただけますでしょうか?
玉
当酒蔵は、小さな酒蔵の部類に入ると思うんですよ。1年間で作ってる数量もそんなに大きい量ではなく、新潟県内には約90ほどの酒蔵があると言われていますが、下から数えた方が早いくらい小さな酒蔵であります。
なのでまず1つ、1番大事なことからいきましょうかね。
コロナ禍で再認識したんですけども、お酒は人にしか味わうことができないじゃないですか。
例えば肉や野菜は動物が食べたりとかもあると思うんですけど、お酒は人にしか味わうことができないということは、人の心を豊かにする、人生を豊かにする商品を本当に追求していかなければいけないんだなというところです。
弊社としては、もちろん大吟醸とか、昔ながらの玉風味など地元の人に飲まれるお酒もありますし、すごく甘いお酒であったり、すごく辛いお酒であったり、ちょっと変わったお酒も色々あるんですけども、
その心はやっぱり人の心を豊かにする、人生を豊かにする商品作りっていうところから、それらの商品が成り立っています。
玉川酒造株式会社
代表取締役 風間様
FJ
商品ラインナップの幅の広さも、飲んでくださるお客さんのことを思い描きながら?
玉
はい。やっぱり生み出してこそだと思うんですよ。歴史はあるんですけど、それを守っていくっていうことも当然なんですが、 酒蔵にしか作れないのはお酒なので、 新しいものを生み出していく、新しい楽しみ、喜びを作っていくっていうのも使命だと思っているんですよね。
FJ
玉風味を始めとする伝統的なお酒と、新しい客層に向けたアイテムがラインナップされています。
世界と日本の市場の違いもあると思いますが、今現在作り手から見た日本酒の業界や市場の背景は、どのように動いていると感じられますか?
玉
日本全体の出荷量、新潟県で例えてもいいんですが、大体平成7年、8年、9年頃がピークだったと言われているんですよね。そこから出荷量はだんだんと落ち着いて、5パーセントとか3パーセントとか落ちていって、現在ではそのピーク時の平成9年頃と比べると、約35パーセントくらいの出荷量になってしまったと言われているんですよ。
ということは他のお酒、ビールであったりチューハイであったり、いろんなお酒の広がりができてきて、日本酒以外で楽しむ人が増えたっていうことだと思うんですよね。
で、売れなくなってくるとどうなるかというと、各社いろんな商品を作り出すようになったんですよ。これって他の業界でも同じですよね。
本当に遡れば、お酒って多分1種類しかなかったと思うんです。うちはこのお酒を作ってます。1級酒、2級酒と特級酒、うちは3本作ってます。それでバンバン売れてたんですけど、売れなくなってくると、こんなのもどうでしょうか。これもどうでしょうか。っていう感じになって、おそらく10種類未満の蔵ってないんじゃないかなってくらい各社アイテムを持っています。
どのように差別化していくか、非常に難しい時代になってきたのかなと思います。
商品ラベルに期待すること
FJ
その差別化できる1つの要素が商品ラベルかと思います。
作り手側から見た商品ラベルは、どのような存在でしょうか?
玉
中身はもちろん想いを持って作るってのはメーカーとしては当然なんですけども、見た目っていう部分は、自分たち、少なくとも弊社ではなかなかうまく表現することができなくて。それをデザインしてもらうっていうのがとても大事で。
後ほどコンセプトの話が出てくると思うんですが、表示できることって少ないじゃないですか?ラベルって。
でもそれが蔵の想いだったり、代弁者というか、ラベルがそこで伝えてくれないとお客様に伝わらないのかなって思います。
雪玉 “SNOWBALL”
ラベルについて
玉
雪玉 “SNOWBALL” に関しても伝えてもいいですか。
お酒を雪の中で寝かせるっていうのが1つの大きな特徴であって、これは昭和56年から研究を始めたことなので、もう本当に長い間40年くらい、雪の中で寝かせたっていうのを売りにしてというか、看板にしてやってきました。
また、玉風味っていうお酒がうちの代表銘柄で、玉のようにまるいお酒、柔らかい味わいのお酒っていうのを表現していて、国内が先ほど言った通り出荷量が非常に少なくなってきているので、海外に向かっていかなきゃいけないっていう時に、ネーミングを雪玉 “SNOWBALL” っていう風に決めてですね、デザインを一体いくつ起こしてもらったんですかね?
FJ
それもちょっと持ってきました。後ほど改めて見ていただきたいと思います。
弊社としましては、ラベルコンテストへの出品を目標に、共同プロジェクトというような形でお願いさせていただいた経緯がございますが、元々この製品はもう出すことが決まっていたのでしょうか?
玉
やりたいなっていう風に思ってました。でもじゃ、どういう風にっていう具体的手法は見つかってなくて。
まず名前からですよね。 雪っていうのを表現しなきゃいけないし、玉風味っていうのも表現しなきゃいけないし、日本酒っていうのも表現しなきゃいけないし、大吟醸で高価だっていうことも表現しなきゃいけないし、いろんな要素があったと思うんですよね。 で、そこで相談させてもらって、たくさんのデザインいただいてブラッシュアップして、とっても長い道のりで申し訳なかった。
FJ
しっかりした商品があるので、それに見合うラベルを弊社ができる加工技術を使って表現する方向性で進みました。
改めまして商品のコンセプトやターゲットを教えてください。
玉
国内の場合は、湯沢駅と越後ゆきくら館の2店舗限定で、高付加価値商品として高く売っていこうっていうのがありました。
国外の場合は、雪に対する憧れっていうのを強く感じていて、外国人に向けて雪っていうものを強く表現した日本酒を作ろうというのがコンセプトです。
共同プロジェクト
FJ
では、この度のプロジェクトを振り返りまして。
デザイン性・意匠性が高いラベルを共同企画し、クライアント企業様の商品と当社の印刷・加工技術をPRする目的として、ラベルコンテストへ出品するにあたり、ご協力いただける企業様を探すところから始まりました。
期限もある中、今からお願いして受けてくれるところが果たしてあるのかっていうところで、すぐ頭に思い浮かびまして、お話をさせていただきました。
玉
声かけてください。また何かあったら。
FJ
お話した段階ですぐに了承のご返事をいただきました。既にこういったイメージがあるということで、デザインに移らせていただきました。
2月の上旬に初回のデザイン提案を出させていただいた記録が残っています。
玉
この段階ではまだ商品名が決まっていなくて、話した後に「ゆきたま」って名前で行こうっていうのを伝えたんだ。
日々色々考えているんですよ。こういう商品作りたいなっていうのは常に考えていて。
初回提案デザイン
玉
最初からこの案がいいなって言いました。
FJ
そうでしたね。ベースがこの右端右下の案ですよね。
品名が決まってこの後に中央の中抜きのモチーフの検討に移っていきました。
玉
そうだそうだ。これ結構苦労したよね。こっからね、色々変えてた。
もうなんか意味を求め出したんだよね。雪積もってるようにしようみたいな。
レース加工とエンボス加工によるテクスチャーを検討
FJ
この抜きの部分に関しては、弊社の技術的なルールがあって、微調整をさせていただきました。
このレース柄に関しては、ふるさと村(新潟市)限定の日本酒 「潟王」で一度やらせていただいています。
玉
この技術を最大限にアピールしたくて、やっぱり面積が大きい方がいいかなと思ったんですよね。また決めていくって大事なことですよね。すごく苦労するんだけど、決めるって難しいことですよね。
それにやっぱり手に取った時に多い。何しようっていうのは。まず手に取ってもらえるのが1番だと思うんですけど、触った時に、あ!って思わせたいって。
FJ
触った時のこのシール1枚分の厚み、この感触は絶対触らないとわからなくて、こだわっているところはありますね。ただ普通に透明の原紙で透けてるだけっていうものではなくて。五感に訴えるではないですけど。
今、特に消費者の方はよく見ているなと思うんですよね。手に取ってもらった時に、お!なんかすごいこだわってる商品だな。シールだなっていうところに、商品自体の価値も感じ取っているところがあると思うんです。
玉
細部までこだわる。ここにこだわる人が酒にこだわらないわけがないと。酒にこだわる人が米にこだわらないわけがない、という表現に繋がっていくと思うんですよね。こんなとこまでこだわったんだっていう、やっぱりすごく大事だなと思います。
FJ
全く同じラベルっていうものはなくて、お客様にはそれぞれオンリーワンのラベル製品を作っていただきたいと考えています。
本当にこうやって作って製品に貼っていただいて、私たちが消費者側としてそれを店舗で見た時にすごい喜びを感じるんですよね。 このシールを作った時にここ苦労したなとか。
玉
売り手側もですね、やっぱり苦労した商品の方が売りやすいんですよ。
お客様にどう伝えるかって時に、これは美味しいお酒ですよって言うのと、これはこれだけ苦労して本当に大変だったっていう。
FJ
ストーリーが違いますね。苦労した商品はずっと残りますからね。
玉
多分それって売れ行きに絶対関わると思うんですよね。熱量が違うというか、商品に対する想いというか。
簡単じゃないこともあったり、ゼロベースに戻そうみたいなこともあるんですけども、無駄じゃないですね、全部。すごい経験になる。あの時はダメだったからっていうのがあると、また次の商品に活かせていける。
玉
自分はすごくこだわるタイプ。だからこそ、酒蔵が全国で1000社くらいある中で、うちがオンリーワンだな、うちしかこれやってないならうちが1番いいんじゃないかっていうくらいまで高めていける。
他と比べた上でもっと工夫できるところが見つけられるって、いいとこでもあると思います。
FJ
弊社で新しい製品をご案内して、使っていただけることが多いと感じています。
積極的に新しいことにご協力いただき非常にありがたく思っています。
玉
新しいのやっぱり好きですね。新しい技術ってのも当然好きなんですけど、何より好きな理由は、熱量があるんですよ、新しいものって。
今度こういう目的のためにこういう手法でこういうのができたよっていうのがあるわけで、目的がないと多分そういうの産み出せないと思うんです。多分すごい熱量を持って、損するかもしれないことにチャレンジしていってるわけじゃないですか。それってすごいシンパシーを感じるんですよね。
ラベルコンテストへの出品
玉
ちょっと別件になるんですけども、ラベルコンテストでアイデア部門っていう部門があったじゃないですか。
最初から狙って出品されたんですか?
FJ
はい。最初からその部門に出したいっていうのがありました。結果は全日本シール印刷協同組合連合会会長賞を受賞させていただきました。
何も決まっていない状態からラベルコンテストに出したいという話が浮上してですね。ですのでお話をお持ちした段階で、もう考えてる商品があるっていうことだったじゃないですか。
玉
本当にチャンスいただいて。
FJ
本来もっと早めにお話をさせていただいて、長い期間かけてデザインなどをブラッシュアップしながら詰めていくところなんですけども。
玉
最初のデザイン提案が良かったってことですね。いきなりこう上がってきたから、トントンと行けた部分はありますよね。
良かったですね、結果ができて。
今後の改善点
FJ
今後の改善点として、耐水性への課題がございます。
玉
現行ラベルが終わったら、水にちょっと強い材質っていうのを考えなきゃいけない。抜きがある分、冷蔵庫に入れて結露した時にものすごく弱いんですよね。
次もし使うなら、紙はどれがいいだろうっていうのは何か思いつくものはありますか?
FJ
上質ベースの耐水紙のご用意はありますが、やはり紙なので。ラベル本来の機能を果たすためにも、課題として受け止めています。また近年お酒の瓶だったりラベルだったり残しておきたいって方が多いですよね。せっかくのコレクションがっていうことにもなりますから。
例えば合成紙のような耐水性のあるラベル原紙に切り替えた時の加工の再現性などは、改良の余地があると考えています。
最後に
FJ
最終的にカラー4色、ニス、ライトエンボス、金箔、銀箔、レース仕様となりました。
ラベル自体に関する評価はいかがでしょうか?
玉
本当によかったですよ。全部表現されていますね。
入れたいことがいっぱいあるんですよ。例えば歴史とか入れたいことがいっぱいあるんだけど、一応全部入ってるんですよね、ここに。
あとラベルがやっぱり安いものじゃないじゃないですか。で、とても繊細なものなので大事に貼らなきゃいけない、お酒も大事に扱わなきゃいけないっていうことに繋がって、こういう1個1個がうちの会社の中でも意識の変化に変わるんですよね。大事にしようっていう。いや、こっちの商品も大事にしたんだから、あっちの商品も大事にしようっていう風に繋がっていくというか。
こういう商品がまた自社で生み出すことができて、1個1個見直していく、良くしていこうよっていうきっかけの1つになったと思うんです。
FJ
私たちも今回のプロジェクトのように、クライアント企業様と共同でものを作り上げていくこのプロセスがやはり大切だと実感しています。最終的に納得ができる良いものができ、こちらも大変嬉しく思っています。
本当にありがとうございました。